OpenStreetMapプロジェクト成功の鍵はコミュニティとコミュニケーションにあります。これまで、個人が行った編集に対するディスカッションは、いつもややこしく煩雑なものでした。この投稿ではOSMウェブサイトの新機能 “変更セットディスカッション”、すなわち変更セットそれ自体に対して公開ディスカッションを行う機能について解説します。
“変更セットディスカッション”導入前
“変更セットディスカッション”機能が実装される以前、変更セットに対してコミュニケーションをとる手段は、メーリングリストやフォーラムといったサイト外の手段を使うか、あるいはその変更セットを作業した編集者に対して直接OSMメッセージを送るしかありませんでした。どちらの手段も、ややこしい手順が必要でした。
そのため、これまで変更セットに対して議論を行うことはしばしば困難を伴っていました。新しいユーザがプラス方向のフィードバックや役に立つを得ることはほとんどなく、編集結果に賛否両論ある場合には、公開で議論が行われること無いまま、しばしばDWGの担当事案となってきました。
“変更セットディスカッション”導入後
“変更セットディスカッション”ではこの問題に関して、OSMに関係している変更セットに対して直接ディスカッションを開始することができるようになりました。このディスカッションは公開状態であり、貢献者の間での協調を図ることが可能となります。
この機能はOSM Note機能に対しても同様に、コメントを残すことができます。これにより、例えばノート(日本語訳: 編集メモ)の投稿者に対してより多くの情報提供を依頼するなど、ノートに対する公開ディスカッションを開始することが可能です。
変更セットへのコメント方法
“変更セットディスカッション”は既にOSMウェブサイト上で利用可能です。機能を使うには、画面左側に変更セットの内容を表示させ、そこにコメントを入力します:
入力が終わったら投稿ボタンを押すと、コメントが表示されます:
Harryさんが返信している様子はこんなかんじです:
…私の手元にEメールで通知が届き、返信があったことが知らされます。
ディスカッションへの参加/退出の選択
変更セットにコメントを入力した後、その変更セットに対して新しくコメントが投稿されたると、自動的に通知を受け取ります。これにより、それ以降の議論に継続して参加できるようになります。コメントを投稿せずにその変更セットの議論を確認していたい場合、”議論に参加/Subscribe”ボタンを押してください。
その変更セットの議論を今後確認する必要がない場合は、”議論から退出/Unsubscribe”を押すと、新しいコメントが投稿されてもアラートが送られなくなります。
“変更セットディスカッション”のユースケース
- 新規ユーザの歓迎
前述のとおり、OSMは新規登録したユーザに対してコミュニケーションをとるよい方法がありませんでした。変更セットディスカッションを使うことで、彼らの最初の編集に対して歓迎のメッセージを送ることができます。加えて、例えばタグづけのレクチャーや特定のやり方の連絡といった内容を、彼らに対する強力なフィードバックとして返すことが可能になります。
- プラス方向のフォードバックを送る
コミュニティとして、私達は自分たちが行った編集に対してプラス方向のフィードバックを受けることはあまりありませんでした。変更セットディスカッション機能を使うことで、その編集に対するありがとうメッセージを送ったり、送られたりすることができるようになります。
- 編集の変更内容についての質問を送る
例えばnameタグの内容が変更されたり、道路のクラスが変更されたりした場合など、編集内容に疑問点がある場合は、ユーザに直接連絡をとって確認をしたいことがあります。変更セットに質問が書き込まれることで、その編集を行った編集者に対して公開フォーラムのような形であなたからのフィードバックを送ることができます。これにより、いままでよりもさらにオープンで開かれたディスカッションを行うことができ、ユーザ間の衝突や編集競合が起こりづらくなることが期待されます。
APIもあります
“変更セットディスカッション”はAPIのコンポーネントも準備されており、Wikiに解説ドキュメントがあります。このAPIを使うことで、OSM編集ソフトウェア上から直接この機能を利用できるような実装を行うことができ、コミュニケーション/コミュニティを通してよりよい編集プロセスが築かれます。
スペシャルサンクス
“変更セットディスカッション”機能は、Google Summer of Codeでの開発、特に、光栄にも私 (訳注: Serge Wroclawskiさん) が担当した生徒である Lukasz Gurdekさんの作業の結果として生まれた機能です。彼の活動成果はまさしく最高級であり私は彼と作業ができてたいへんうれしく感じます。
また、開発されたコードをOSM.orgのコード体系にマージするにあたり、私とLuksazさんと一緒に作業してくれた Tom Hughesさんに特別の感謝を捧げます。彼のがんばりがなければ、私達のブランチはウェブサイトに実装されることがないままだったでしょう。
そしてもちろん、この機会を与えてくれたGoogleと、Google Summer of Codeプロジェクトにも感謝を捧げます。
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