Monthly Archives: June 2018

GDPRへの準備について

Modified image. Original by TheDigitalArtist. Licence: CC0

OSMF理事およびOSM作業部会は、データ保護ルールに関して近日発効される法的な変更に対する準備を行っています。一般データ保護規則 (General Data Protection Regulations, GDPR)は欧州において、2018年5月25日を以って発効します。OpenStreetMap財団 (OSMF)は欧州域内の法的主体として、GDPRに準拠することを求められています。OpenStreetMap License Working Group (LWG, ライセンス作業部会) はGDPRに対するホワイトペーパーを作成し、今後必要となる準備作業について通達を行っています。その終わりに、私達は今後数ヶ月間の間に実施する予定のGDPR準備計画を作成しました。必要とされる変更のほとんどは、管理上の事柄です。私達は、今後みなさんがOSMを利用するにあたって関係することを中心に、何が変更されるのか、解説しようと思います。

詳細解説の前に、いくつかのキーポイント:

経路探索のためにOSMを使っている場合

OpenStreetMapは自由でオープンな世界地図です。もしOSMデータを使って経路探索を行う場合、必要となる変更はありません。例えばここには、なんらかの形で地図を作成したり、地点情報の検索を行ったり、経路探索を行ったりする場合が想定されます。

OSM貢献者の場合

みなさんが行った貢献に変更はありません。しかしながら、OSMFはプライバシーポリシーを更新し、個人データの収集方法と処理内容について、GDPRにもとづいた特記記載を行います。今後、追記が行われる際に、その内容をご確認ください。

また、OSMが行うGDPR対応計画が完了した後、個人データを含むメタデータへのアクセスは制限されることとなります。(その他のデータへのアクセスには変更ありません。具体的にどのAPIコールに修正が加えられるかは、こちらのwikiページを参照してください) この制限作業の結果として、実際に貢献者あるいは編集者として影響があるかどうかは、利用するエディタの種類や、GDPRの結果を受けて別ソフトが開発されるかどうかに関連してきます。OSMFは、広く利用されるエディタのメンテナーに対し、どのような変更が加えられるかの解説を行い、開発を支援することを検討しています。今後、いくつかの情報のやりとりを行う予定ですので、そちらを参照してください。

OSMデータを利用したサービスプロバイダの場合

OSMメタデータ、(特に、ユーザ名やユーザID、変更セットIDなど)個人データを含むメタデータを利用するプロジェクト(例: ソフトウェア)に関係している場合、データへのアクセスを有するために、OSMFが個人データ保護のために定める利用規約に従う必要があります。これらの規約はGDPRに準拠するよう作成される予定であり、規約はコミュニティが閲覧できるようにされる予定です。今後の投稿をお待ちください。

また、2018年5月25日以降、EU域内から個人データの処理を実施しようとする場合、GDPRの対象となり、適切な対処が求められることにも注意する必要があります。例えば、GDPR 第14条 (https://gdpr-info.eu/art-14-gdpr/) に記載されるとおり、透明性が必要とされます。OSMFおよびLWGは、準拠に必要となる作業を簡略化するためのテンプレート文書作成に着手していますが、最終的には、個々のデータ処理において実施する内容に応じたGDPRコンプライアンスが必要となります。

OSMメタデータを利用しているプロジェクトの場合

メタデータを利用しているプロジェクトは最も影響を強く受けます。もしOSMメタデータを利用(例: 品質管理やデータ検証など)しているプロジェクト(例: ソフトウェア)は、GDPRの適用対象となり、適切な管理が必要とされます。それらのプロジェクトでは、第14条の記載に基づき、すべてのOSM貢献者に対する情報提供と、プライバシーポリシーおよび実施方法の開示が必要となります。

GDPRとは

GDPRについて知るための情報源は数多く存在します。データ利活用およびデータ保護という2つのポイントは覚えておいたほうがよいでしょう。GDPR (EU) 規制の全文はこちらから参照できます。OSMライセンス・ワーキング・グループのGDPRホワイトペーパーはこちらからレビューできます。また、いくつかの組織では非常に明確なダイアグラム解説チェックリスト作成を行っています。

ODbLとの準拠状況について

はい、ODbLにも準拠しています。ODbLは、著作権とデータベース権について定めるものです。条項では明確に、商標や特許などの知的財産権について対象から除外(そのため、OSMFは別途商標ポリシーを定義しています)しており、さらに、その他の国家法についても除外しています。具体的には以下の部分です。 “The right to release the Database under different terms, or to stop distributing or making available the Database, is reserved.” 同様に貢献者規約では、それらに対して知的財産権およびライセンスについて定めつつ、その他のプライバシー法などについては言及していません。

実施計画について

変更点や更新の開示は、以下のページから行っています。OSMF理事はライセンシング・ワーキング・グループと連携し、今後数週間にわたってより詳しい作業を実施してゆきます。

https://wiki.openstreetmap.org/wiki/GDPR

質問はこちら

いただいた質問には、OSMF理事およびOSMワーキング・グループより解答します。

(Pokémon GOから始めた)新規マッパーに、コミュニティメンバーからお願いしたいこと

以下の文章は、Pokémon GOをきっかけに新しくマッパー活動をはじめたSpanholzさんからのオリジナルメッセージに対し、他のOSMコミュニティメンバーからの助言をもとに修正を行ったものです。修正は許可を得て行っています。

2017年、Pokémon GOとIngressは背景地図をOpenStreetMapに切り替えました。ゲームを遊んでいる多くのかたが、背景地図から情報が少なくなっていることに気がついたかと思います。例えば建物が表示されていない、公園や歩道が消えている、などです。ですが、この背景地図はあなたが編集することで、それら失われた情報を追加し、自由な世界地図作りに参加することができます。

OpenStreetMapとは
OpenStreetMap (OSM) は誰もが編集可能な地図です。Wikipediaに近しいところがありますが、違っているところもあります(Wikipedia編集に参加したことのあるかたはぜひこちらをお読みください)。あなたは、地球上で目にするあらゆることを、この1つの大きな地図に書き加えることができます。これは、誰もが使うことのできるオープンデータなのです。例えばNiantic社はPokémon GOでOSMデータを使っていますし、Wheelmapユーザは足の不自由なかたをサポートするためにOpenStreetMapを使っています。Kurvigerはバイクでより気持ちよく走れるよう、適度に曲がって住宅地から離れた場所を案内してくれます。あなたが情報を書き加えることで、それ以外ににも多くの用途で、データは実際に利用されます。

OSMと他のオンライン地図との違い
OpenStreetMapのデータはオープンです。適切な著作権表示を行ってさえいれば、OSMデータをもとにした地図を印刷して販売してもかまいません。地図データを使って、経路探索システムを作成することも自由です。独自の地図スタイルを作成し、OSMデータの可視化を行うこともできます。私達は、地理空間情報は1つの自由なデータベースとして、万人に開かれているべきだと信じています。

マッピングって難しいの?
いいえ、難しいものではありません。OpenStreetMapの世界は、ポイント(ノード)、ライン(ウェイ)、エリアとリレーション、という要素の組み合わせで構成されています。要素はそれぞれ、(name=Africa のような)タグを値として持っています。例えば、児童公園はエリアとして形状が描かれ、以下のようなタグを持っています。
name=Happy faces
leisure=playground
opening_hours=10:00-20:00

ゴミ箱や自転車修理場などの小さな地物はノードで表現します。ウェイは、道路や歩道、小さな河川などに使います。エリアは、森林や建物、湖沼のような地物に使います。
よくマッピングされている地物には、以下のようなものがあります(これ以外にも多くの地物があります。詳しくはwikiを参照ください)

どうやったら編集に参加できるの?
コンピュータを使った編集作業では、主に2種類のエディタが使われます。ブラウザを使ったエディタ iD、そして上級者向けのソフト JOSMです。スマホから情報を追加するには、私達の地図を表示できるようなアプリをインストールすると、編集機能が用意されていることがあります。アプリの一覧はこちらを参照ください

守るべきたいせつなことはなんでしょう?

ヘルプが必要なときは…

  • Wikiを検索してみてください。数多くのタグがそこで解説されています。タグの議論ページや、taggingメーリングリスト過去ログを検索するのも役に立ちます。
  • 他の地域を探してみて、同じような地物が描かれているか見てみましょう。大都市やヨーロッパを中心に、素晴らしく詳細に地図が描かれています(例えば、ゴミ箱の色まで記録されている場所もあります!)
  • 質問してみましょう! 他のマッパーたちがきっとあなたをサポートしてくれます。help.openstreetmap.org や、フォーラム、地域ごとに用意されたメーリングリストIRCチャンネル/r/openstreetmapなどで質問してみてください。また、その他にも、多くのソーシャルメディアではコミュニティ・グループが用意されています。

意識しておくべきこと

  • 修正した地図の情報は、承認プロセスを経ることなく公開されます。記載する内容にはくれぐれも注意し、正しい情報だけをアップロードするようにしてください。アップロードされたデータは、車のドライバーや歩行者、自転車乗り、時にはカヌー愛好者にも使われます!
  • wikiやその他の場所で紹介されているタグで、適切な内容を見つけられなかった場合、新しいタグを自分で作ってもかまいません。
  • wikiには多くの情報が記載されていますが、時折、相互に矛盾した内容や通常よく適用される使い方とは異なった説明が記載されていることがあります。
  • wikiで新しいタグを設定するにあたり、公式のタグ制定提案を行うことは必須ではありません。しかしながら、提案プロセスを行うことで、有用なフィードバックを得ることができ、タグの内容をより明確に定義することができるようになります。
  • 航空写真は撮影された年代が古い場合があります。また、実際に取得されたGPSトラックと比べてオフセット(画像のズレ)が発生していることがあります。

よいマッピングとは

ぜひこちらを御覧ください: グッドプラクティス入門!

例えば、

    • オブジェクトが何であるかを説明するためにnameタグを使わないようにしましょう。例えば、name=benchではなく、amenity=benchと記述します。nameタグは実際に名前がつけられている地物に使います。例えば学校やレストランなどです。(詳細は Namesのページを参照ください)
    • 土地利用(landuse)と道路(street)はくっつけずに描きましょう。くっつけて描いてしまうと、後日修正を加えることが難しくなるばかりではなく、混乱のもとになります。
    • 加えられた変更をむやみに削除しないようにしましょう。まずは対象の変更を行ったマッパーに対して、その変更がどのような意図であったかを問いかけてみてください。もしかしたら、あなたが参照している衛星画像が古い内容なのかもしません。
    • OSMデータはさまざまな方法で可視化され、多くのウェブサイトやアプリケーションで使われます。www.openstreetmap.orgで表示させるためだけに間違ったタグを使うことは避けましょう。

その他のこと

Pascal Neisさんが運営しているこちらのサイトでは、あなたの近所で活動しているマッパーを表示することができます。もしよかったらコンタクトしてみましょう。

これから開催されるOSMイベント。あなたの家の近くでミートアップが開催されるかもしれません。実際に対面で編集者とあってみることは良いことです。

楽しみながら、これまでにない最高の地図を作りましょう!

Pokémon GOは大人気のモバイルゲームであり、OpenStreetMapのデータを”出現ポイント”としてゲーム内で使っています。これによりOpenStreetMapのことを知るかたが増え、Pokémon Goプレイヤーが今後、OpenStreetMapに貢献するようになってくれることを期待しています。

OpenStreetMap はオープンなライセンスのもとで、誰もが利用可能な自由な地図データの提供を目的とした世界規模の複数人参加プロジェクトです。世界各地のボランティアは、自身の住む地域における現地知識を提供し、これまでにない最高の地図を作り上げるために時間を費やしています。プロジェクトへの貢献は、地図データの改良GPSトレースのアップロード、プロジェクトの認知度向上、wikiの編集や翻訳、ボランタリ活動としてのワーキンググループへの参加、募金OSM財団への加入などを通して行うことができます。OpenStreetMapの編集を行うためにOpenStreetMap財団に加入している必要はありません。