Creative Commonsとの慎重な検討と意見交換を経て、私たちはCC BYのもとに管理されているデータベースやデータに関する運営について、OpenStreetMapでそのデータを利用する際に特別許可を得る必要がある、という方針を引き続き継続することを決定しました。
確かにOpenStreetMapのコンテンツのほとんどは、実際に現地を確認し、その情報を地図に落とすというボランティアの手でつくられる活動ではあります。ただし例えばクロスチェック目的や、あるいはより直接的に、データの改良を行う目的など、状況によって地図改善のために外部のデータセットを使うケースもしばしばあります。そして、それらデータセットの多くはCC BY (Creative Commons Attribution) 規約のもとで公開されており、それらのライセンスと私たちが採用する配布ライセンスである ODbL 1.0の間のライセンス互換性は、OSMでそれら外部データを扱う際において非常に重要な観点となっています。
これまで長い間、政府を始めとするデータ公開者の間では、CC BY (Creative Commons Attribution) バージョン 2.0と3.0が広く利用されてきました。そして、帰属表示(Attribution)に関して、CC BYのこれらのバージョンとODbLでは配慮方法に相違があるため、LWG (Licence/Legal Working Group) では、OpenStreetMapでそれらのデータを使う際にライセンサーによる特別利用許可を求め、私たちが管理する中心的なサイトに設けられている特設ページに対して帰属表示を行う、ということを行ってきました。
CC BY 4.0はデータベース権を取り扱うことになった初めてのバージョンで、表記に関してもより簡素に行われています。バージョンの違いによる差分はこちらから確認することが可能です。現在この新バージョンのライセンスは有力なデータソース配布におけるその適用事例を増やしており、CC BY 4.0とODbLの間のライセンス互換性に関する声明を発表するよう、私たちへのリクエストが幾度も寄せられる状況となっていました。そのため、LWGによる作業が開始され、昨年末、CC BY 4.0が適用されたマテリアルをOSMで利用する際のライセンス・レビューとガイドラインの策定が行われることとなりました。
検討の過程においてはCC BY 4.0を情報源とするデータを直接ODbLで利用できるようになる可能性もありました。しかし、CCおよびOSMFは双方ともに、完全な互換性を維持することは困難である、との結論に達しました。少なくとも1箇所の非互換箇所、そして帰属表示に関して同じく1箇所の互換性に疑いのある箇所があることが明確となっています。そのため、BY 4.0でライセンスされたマテリアルについても、OSMで利用する際にはライセンサーへの特別許可を得ることが必要である、と判断しています。この方法が、それぞれの作業を行うにあたって最もよい手法です。
この判断に至った2つの要因は以下の通りです。まずCC BY 4.0では、ライセンシーが帰属表示を行う際の方法についてかなり柔軟な方法が選択できるよう配慮があるのですが、私たちが採用している間接的な帰属表示方法はその要求を満たしているのではないか、という示唆がありました。しかしながらOSMFは、BY 4.0のライセンサーが私たちの採用する方法を詳細に理解しないために混乱が発生する可能性がある点、そしてデータ提供者への敬意とよりよい手続方法の採用を行うという判断から、私たちのウェブサイトへの帰属表示掲載を行うという手法で問題ないかどうか、ライセンサーに対して特別許可を得るほうがよいという判断を行っています。
2つめの理由は、CC BYは再配布時において、DRM (訳注: Digital Rights Management、デジタル著作権管理) を適用することについて非常に厳しい制約が存在するという点です。類似の条項はODbLでも盛り込まれていますが、”派生著作物 (Derivative Database. 訳注: 日本では二次的著作物が相当)” を配布する際において複数の配布方法を許容しており、そのなかで、データへの非制限アクセス方法を設けるという制約達成条項が存在しています。また、ODbLを利用した “制作著作物 (Produced Works)” (例: 地図) ではそうした制約自体が存在していません。この差異による非互換状態を解消するにあたり、CC BY 4.0 2a5B項における技術的保護手段の適用禁止条項の免除が必要となります。
そして、本件に関連する人々がこうした特別許可を得ることをより簡便にするために、私たちは添付書類(カバーレター)と制約免除に関するフォーム、そしてCC BY 2.0や 3.0といった別バージョンについても同様の手続きを可能とするための文書を用意しました。なお当然のことながら、インポート作業を行う際にはインポート・ガイドラインに沿うことが必要であることと、こうした法的な手続きはインポート作業を成功させるにあたって、第三者が提供するデータセットを活用する作業に必要となる作業項目の1つでしかないことを忘れないでください。
本件について対応くださったCreative Commonsの皆様、特に、このプロセス策定をサポートしてくださった Diana Petersさん、そして添付書類と制約免除の文案作成に協力してくれたMapbox社のKathleen Luさん、誠にありがとうございました。
Simon Poole – For the OSMF Lecence Working Group