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CC-0の優位点: 簡素化されたジオデータ向けライセンスによってEUオープンデータ指令が得られる恩恵

EU諸国はCC-0ライセンシングを採用し、OpenStreetMapを含むオープンデータの利点と使いやすさを最大化すべきです。

EU指令2019/1024 – 一般にオープンデータ指令として有名 – は、まもなくEU全域の政府から新しいデータセットを開きます。例えばルクセンブルクは、既にすべてのオープンデータセットに対してCC-0ライセンスを適用することを強く推奨する正式な勧告を採択しており、これは施行されて以後、既にジオデータセットに適用されています。  

これは欧州と世界にとって素晴らしいニュースです。また、OpenStreetMapと、OpenStreetMapを利用する数多くの利用者にとっても素晴らしいこととなります。しかし、それを実現させるためには、いままさにデータ公開計画を最終決定している関係者たちが、微妙だが重大な間違いを避けなければなりません。彼らは自国が採用するライセンスについて、より一般的なCC-BY 4.0ライセンスではなく、クリエイティブ・コモンズCC-0ライセンスを使ってデータをリリースすべきなのです。

なぜそうなのかを説明するには、いくつかの背景が必要です。地理データセットが公開される際には一般的に、そのデータがどのように出展明記されなければならないか、どのように変換や再配布が可能か、誰がそのデータを使用することが許されるかを明記したライセンスの下でリリースされま。。OpenStreetMapは、多くのデータソースから公開される地理データを組み合わせ、統一された世界地図を作成しています。データを組み合わせることは必ずしも容易ではありませんし、ライセンスの組み合わせはさらに難しいものとなっています。

例を挙げてみましょう。ある政府機関が地理データを公開したとして、その政府機関がデータを更新して新しい版を公開した際には、そのデータを利用して作成された地図も必ず更新しなければならない、という条件を付けたとします。単独で見れば、これは合理的に聞こえるでしょう。政府機関の職員は自分たちが公表する情報を熱心に更新しており、職員の立場からすれば、そのデータを利用する人々に対しても、職員と同様に古い情報を広めないよう求めるのは理にかなっています。しかし、そのデータが、同じような利用条件を持つ何十もの他のデータセットと組み合わされ、再配布されたらどうなるでしょうか? あるいは組み合わせが数百だとしたら? 世界の変化を反映するために部分的に編集されたら?  

もしかしたら世界は、この特殊な問題に対する解決策がある、と思われるかもしれません。ですが、断じて宣言できます、あらゆるライセンスに付随する問題に対する解決策を作り出すことは不可能です。ライセンスが衝突する可能性があるということは、私達のプロジェクトOpenStreetMapに対して投入するデータについて非常に注意深くなければならないということを意味します。投入されるデータセットのライセンスとプロジェクト自身のライセンスとの互換性は必ずチェックされ、新しいデータソースを取り込むことによって、世界中で様々な利用法で使われているOpenStreetMapのデータの活用を妨げないようにしなくてはなりません。

そしてその利用価値は計り知れなません。オープンデータ指令の付属書Iにおいて、この取り組みが対象とする価値の高いデータセットのテーマとして「地理空間」を第一に挙げているのは、きっと偶然ではないでしょう。地図はすべての人々、企業、組織にとって有用なものです。そしてOpenStreetMapは、地図データが世界中の人々に届くための重要な一部となっています。私たちのプロジェクトは、極めて人気の高い地図プラットフォームの多くに利用され、数十億の利用者にリーチしています。 さらに重要なことは、OpenStreetMapは誰でも無料で使えるということです。オープンデータ指令の目標である “公共部門のデータを再利用し、すべての経済部門にわたるイノベーションの原材料とする” ための理想的なパートナーとして私達のプロジェクトが存在していることは、無料で利用できることも大きな理由のひとつであると、私たちは考えています。

しかしそれを実現するためには、データはOpenStreetMapが使用できるライセンスでリリースされなければなりません。この指令の施行規則では、この責務を担う政府職員・自治体職員のためのライセンスガイダンスが提供されています:

指令(EU)2019/1024は、公共部門の情報を再利用するにあたってオンラインで利用可能な標準的な公共ライセンスの使用を促進することを目的とする。推奨される標準的なライセンス、データセット、文書の再利用のための課金に関する欧州委員会のガイドラインでは、推奨される標準的な公的ライセンスの例として、クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスを挙げている。CCライセンスは非営利団体によって開発され、世界中の公共部門の情報、研究成果、文化的領域の資料のための主要なライセンスソリューションとなっている。したがって、この実施細則では、CCライセンス一式の最新版、すなわちCC 4.0を参照する必要がある。CCライセンス一式と同等のライセンスは、データの再利用の可能性を制限しない限り、データ保有者が提供する更新情報を含める義務や、データの最終更新日を明記する義務など、再利用者に対する追加的な取り決めを含むことが可能である。

高価値のデータセットは、クリエイティブ・コモンズ・パブリック・ドメイン・デディケーション(CC0)、あるいはクリエイティブ・コモンズ・BY 4.0ライセンス、あるいはそれと同等か、より制限の緩いオープン・ライセンスの条件下で再利用できるようにしなければならない。ライセンサーは、ライセンサーのクレジットを示す帰属の要件を追加的に要求することができる。

cf 指令(EU)2019/1024 Impact Assessment

残念ながら、OpenStreetMapがCC-BY 4.0でライセンスされたデータを使用するためには、いくつかの免責事項を追加で取得する必要があります。その理由は微妙ですが重要です。詳細はこちらで解説されています。 指令ガイダンスの作成者はこのことに気づいていなかったかもしれません。  私達は、多くの政府・自治体関係者がCC-BYに精通していることを知っています。しかし、上記のリンクで説明されているように、CC-BYは帰属の要求以上の制限を伴います。施行規則第2条の趣旨は明確です。“社会経済的なポテンシャルが最も高い公共データは、最小限の法的・技術的制限で、無料で再利用できるようにされる“ということです。その意図を実行する責任を負う関係者は、CC-BYではなくCC-0を選択すべきです。

私達は、これが常に可能とは限らないことを理解しています。そのような場合、データ公開に係る職員は、第4条で認められているように、より制限の少ない条件でCC-BY 4.0データをライセンスすることを検討すべきでしょう。私達OSMFのライセンス・ワーキンググループは、CC-BY 4.0をより制限の少ないものにし、その下で公開されたデータをOpenStreetMapで明確に使用できるようにするために、職員がライセンスに付記することができる短い文言を提供しています:

Section 2(a)(5)(B) of the CC BY 4.0 license is void. Attribution to a central list of sources via URL is sufficient to provide attribution in a "reasonable manner" in accordance with Section 3(a)(1) of the CC BY 4.0 license.

OpenStreetMapは、世界で最も成功したオープンデータプロジェクトのひとつです。これから行われるEUオープンデータ指令の最終決定の際に適切な決定がなされれば、オープンデータ指令もまた、オープンデータプロジェクトとして大きく成功する可能性があります。