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ライセンスによるカバー領域

ODbLとコミュニティガイドライン、それぞれのカバー範囲についてguidelines_sign

まずはじめに…

OpenStreetMap (OSM)の本質とは、世界全体を網羅する地理情報データベースであり、そのデータベースのライセンスとしては、公開時の自由を保証するために基盤からデザインされた Open Database License (ODbL) が適用されています。ODbLは基本的な考え方として、創造的な著作物を対象とする Creative Commons “表示-継承” (CC-BY-SA) ライセンスや、コンピュータのソースコードに対して適用される GNU General Public License (GPL)にとても類似しています。

CC-BY-SAとGPLはどちらも長い年月にわたって利用されてきたライセンスであり、作品の製作者が作品の複製に関する扱いを定める”著作権”関連の法規に組み込まれてきました。これらの法規は、いくつか形式の違いがありこそすれ、遡ること300年もの歴史を保持しています。その長い年月の中で、著作権法は多くの立法者や法律家、裁判官、司法によって吟味され続けてきました。その吟味のプロセスは立法や司法の法規として結実しており、その都度行われてきた判断は “判例法”の基礎を支える柱となっています。さらに、そうしてまとめられた先例を基に、後世における議論では、特定の利用法が法規の規定内に収まるかどうかの判断が行われています。ここで重要な事は、判断が行われるのは裁判官や司法が判決を下した時のみであるということです。それはつまり、判例法や先例が全くない状況下においては、確定的に揺らぎない結果の判断がしばしば不可能であることがある、ということです。

著作権がカバーする領域とその拘束力については法廷で幾度と無く審理されており、OSMのライセンスを策定するにあたっても、それらの内容が踏襲されています。しかしながら、一般的な地理情報を格納するデータベースに対して著作権を適用することは不明瞭な部分を多く生じさせることでもあるため、私達のライセンスは、著作権法、契約法、そして欧州データベース指令の一部として1996年に最初に述べられた”データベース権“を基盤として構成されています。私達オープンデータにとって悲しむべきことに、より洗練された分野であるオープン・コンピュータ・ソースコードや、オープンな創造的作品と大きく異なり、特にライセンスの継承 (share-alike)に関する点を中心として、現在、いくつか特異な問題点が生じています。そして、データベース権がまだ”未成熟(young)”であるということは、この分野に関する歴史が浅いということを意味しており、ODbLを適用するに際して、判例法や先例において不明瞭な部分が多く存在することを示します。この不明瞭さはOSMの利用者にとってリスクであるとともに、OSMのより広範な普及や、プロジェクト自体が掲げる主目標のひとつ、すなわち “創造的、生産的、あるいは予想だにしない方法での” データ利用の許可、という目標の阻害要因ともなっています。

法廷や司法判断において判例法や先例の判決が下されるまで、私たちはデータ提供を行う人々の意向 (つまりOSMコミュニティの意向) を明確にし、不明瞭な部分を削減してゆく活動を行うことが可能です。私達が合意した見解は、判断の際に大きな比重をもたらすものであり、OSMの利用、そしてその他のOpen Dataの利用に関する将来的な判断において方向性を形作る助けとなるでしょう。

新しいガイドライン

ライセンス作業部会 (Licensing Working Group, LWG)ではOSMデータを利用する際の不明瞭な部分を削減し、なおかつコミュニティの意向が保護されるよう活動しています。これまで多くの議論が交わされた結果として、本年6月に、いくつかのガイドラインが承認されました。

実質的な/Substantial

著作権において”フェアユース”という例外規程が存在し、サンプルの提供は実質的ではない、とみなされることと同様の考え方が、データベース権においても存在します。抽出されたデータが実質的であるかどうかは著作権における判断に追従しており、データベース権においても、抽出した内容と原作品(original work)との関係性によって判断が行われます。不幸なことに、この判断基準によって、データを利用する側は自分の使い方が実質的であるか、それともそうでないか、という点について不明瞭な状況を生み出す結果となりました。このガイドラインでは”実質的”という語について、OSMの文脈に従ってより正確に定義を行っています。詳細については“実質的に関するガイドライン/Substantial Guideline”を参照してください。

制作著作物/Produced Work

“制作著作物/Produced Work”はODbLで定められた用語であり、データベースを利用してはいるが、データベースそのままを利用することなく制作された作品のことを指します。ODbLにおけるライセンス継承(share-alike)条項はデータベースにのみ適用されるものであり、”制作著作物”には適用されません。これはとても重要な事であり、元データと利用作品という二者を、可能な限り明確にした上で区別が行われます。詳細については “制作著作物に関するガイドライン/Produced Work Guideline“を参照してください。

瑣末な変更/Trivial Transformations

データを利用するにあたり、OSMデータを操作したり、”形式変換” することが発生します。この作業において、OSMコミュニティによって行われたコア部分の貢献に対する追加や改善は、事実上、発生しません。さらにそうした捜査の結果を公開することを強要することは、なんら公的な利益を生じさせません。例えば、osm2pgsqlを使ってOSMデータをPostGISに投入し、レンダリング用データベースとして利用する場合、この形式変換では作業上なんの価値も生み出していません。そのため、私達はこうした操作を “瑣末な変更/trivial”と呼称します。詳細については “瑣末な変更に関するガイドライン/Trivial Transformations Guideline“を参照ください。

地域分割データ/Regional Cuts

世界中の幾つもの地域で、その地域の地図データとしてOSMデータが最も便利な状態となっている場所が存在します。また、もちろん、まだそうではない地域もあります。そして、まだOSMデータが未整備の地域においては、別の提供元からのデータを代替として利用するという行為が、データベース全体を対象とした継承条項の適用対象となるかどうか、明確な規定が無い状態でした。この点が不明瞭であるがために、いくつかのケースにおいて、一部ではOSMデータが整備されている地域においても、OSMの利用が妨げられる要因となっていました。このガイドラインでは、いくつかの条件を満たす限りにおいてOSMデータを利用可能な地域と、それが不可能な地域の区別を定型化し、取り入れました。詳細については”地域分割に関するガイドライン/Regional Cuts Guideline“を参照ください。

レイヤ重畳/Horizontal Layers

世界中の多くの地域でOSMデータが最も便利な状態となっていることと同じように、この世界には多くの主題を表現する “レイヤー” が存在します。例えばOSMデータが優れている領域のひとつである、レストランや食事処の情報を取り上げるとします。その場合の問題は、他の情報源からの追加レイヤーを許容するかどうか、そしてそれがOSMデータの利用方法に制限を与えるかどうかという点です。本ガイドラインでは、慣習的に使われてきたもうひとつの原則: 地図表示における孤立したレイヤーは、それがOSM由来のものであろうとなかろうと、特定の条件を満たす限り重ねあわせてよい、という内容を定型化し、取り入れました。詳細については”レイヤ重畳に関するガイドライン/Horizontal Map Layers Guideline“を参照してください。

これからの議論について

公開されたこれらのガイドラインは最初の一歩であり、OSMの正しい利用を取り巻くグレーゾーンの明確化についてはこれからも多くの作業が必要です。特に以下の課題について、明確なガイドラインの策定が必要となっています:

  • メタデータレイヤ – 外部で収集された(OSM以外の)メタデータのレイヤが作成され、そのデータベースは完全に分割されているとして、そのデータベースの内部で使用されている数字を使ってOSMデータベース内の個別の要素を特定した場合、このデータベースは派生データベースとして扱われ、共有されるべきか?
  • インデックス化 – 例えば検索エンジンにおける利用などで、OSMデータがインデックス化された場合、そのデータベースは派生データベースとして扱われ、共有されるべきか?
  • ジオコーディング – もし特定の場所が、住所やその他の記述データによって特定される場合、”ジオコーディング”の処理は、ライセンスで定められた”継承/share-alike”条項を発効させ、ジオコードされたデータは共有される必要があるか?
  • フォールバック” – まず最初にOSMデータを参照し、もし回答がなかった場合に別のデータベースの検索に”フォールバック”する場合を想定。それらのデータベースは分離されていたとしても、処理のプロセスで見た場合、その2つのデータベースは結合されている。それであれば、その結合状況は共有されるべきか?
  • 動的データ – 例えば駐車場の空き状況など、動的データの提供者がOSMデータを参照してサービスを提供した場合、動的データは共有の対象となるかどうか?
  • 改変ファイルの提供 – データベースを共有する場合、”改変した内容すべてを含むファイル”を提供することをODbLは求める。しかしその方法は規定されていない。このファイルはどのような形式で提供されるべきか?

LWGでは引き続きこれらの課題について、コミュニティとデータ利用者の双方を交えて議論してゆきます。あなたも議論に参加したい、貢献をしたいと考える場合は、ぜひOSM Foundationに参加し、LWGにコンタクトをとって、議論に参加してください。また、法的な全般議論用のメーリングリストにもぜひご参加ください。私達はみなさんの意見を聞き、議論を深めたいと考えています。